人気ブログランキング |

子どものとき、道ばたの神さまはどこの辻にもいらっしゃった。 年を経て探してみたら、ずいぶんお仲間が減っていた。 小さな生きものと同じ‥‥‥そう、でも、負けないよ♪
by march_usagi
プロフィールを見る
画像一覧
更新通知を受け取る
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
ライフログ
アウシュビッツの沈黙

アウシュビッツの沈黙

カテゴリ
全体
海の外そぞろ歩き
そぞろ歩き
道ばたの神さま
わたしのお寺と神社
生きものたち
まつろわぬ草木
ちょっとこだわり
おいしいもの好き?
秘密の本棚
匠のおしごと
そのほか
未分類
わたしの好きなブログさん
以前の記事
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
最新のコメント
otyukunさま 当..
by march_usagi at 12:10
古文に挑戦とは素晴らしい..
by otyukun at 07:03
otyukunさま こ..
by march_usagi at 12:16
水仙は可憐で着物にも結構..
by otyukun at 07:03
24日の夜食にショートケ..
by 片岡直樹 at 14:34
片岡兄 イブに二度目の..
by march_usagi at 09:58
私事で恐縮ですが、24日..
by 片岡直樹 at 01:24
otyukunさま こ..
by march_usagi at 10:53
これだけ鳥がいるのは水辺..
by otyukun at 09:01
otyukunさま 上..
by march_usagi at 11:02
最新のトラックバック
佐助稲荷 -2019- ..
from 鴉の独りごと
仁王さま 運慶作 -杉本寺-
from 鴉の独りごと
gay dating
from gay dating
cialis buy o..
from cialis buy onl..
オーレア (リコリス)
from 鴉の独りごと
中山虫送り 2019 -1-
from 鴉の独りごと
リゾルト
from リゾルト
かたくりの花 ~箱根湿性..
from 鴉の独りごと
ミズバショウ ~箱根湿性..
from 鴉の独りごと
一夜明けて
from 鴉の独りごと
検索
ブログパーツ
最新の記事
鳥は歩いて観るのだ
at 2020-02-15 00:00
わすれられた軍刀
at 2020-02-08 00:00
古文書のみちは遠く険しく‥‥‥
at 2020-02-01 00:00
ただの風景がいとおしくなる日
at 2020-01-25 00:00
変わらざるメルシーのラーメン..
at 2020-01-18 00:00
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
オヤジ
歴史
画像一覧

カテゴリ:秘密の本棚( 30 )

古文書のみちは遠く険しく‥‥‥

日本語なんだから読めないわけあるまい‥‥‥

そう高をくくっていた古文書ですが、

古文書のみちは遠く険しく‥‥‥_a0278809_15530272.jpg

これがなかなか手ごわい! すらすら読めるようになりません。


じつは前にも挑戦したことがありまして、

勤めていたころだし、時間をとるのがむつかしいので、

古文書のみちは遠く険しく‥‥‥_a0278809_15533083.jpg

就寝時に教則本をながめておりました。

でもこれって睡眠導入剤みたいなもんで、つい寝こけてしまう。

古文書のみちは遠く険しく‥‥‥_a0278809_15541064.jpg

目ざめればきれいさっぱり忘れておりました。


なので、今回はきっちり計画たてて、

古文書のみちは遠く険しく‥‥‥_a0278809_15542867.jpg

そう、夏休みの時間割みたいに

ウィークデイの朝食後、一時間机にむかってお勉強、

とこう決めました。

古文書のみちは遠く険しく‥‥‥_a0278809_15545520.jpg

仮名文字までは順調にいって、

古文書のみちは遠く険しく‥‥‥_a0278809_15551590.jpg

おう読めるじゃん! わし偉いっ!

と自己満足にひたっておったのですが、

古文書のみちは遠く険しく‥‥‥_a0278809_15553810.jpg

古文書の主流って、手書きの漢字ですよね。どっと氾濫しだしたらもういけません。


しかたなく一文字ずつ憶えます。

たとえば、

古文書のみちは遠く険しく‥‥‥_a0278809_15560050.jpg

この字は「相」という字‥‥‥じっと見ているとそんな気もしてきます。

古文書のみちは遠く険しく‥‥‥_a0278809_15562288.jpg

これは「出」‥‥‥これも慣れれば納得できる。

でもこれは?

古文書のみちは遠く険しく‥‥‥_a0278809_15564542.jpg

ちなみに左から「夜」「帰」「道」です。どうしてこうなっちゃう?

これはどうだ?

古文書のみちは遠く険しく‥‥‥_a0278809_15570952.jpg

「仰」のくずし‥‥‥


しかも、しかも、しかもですよ、

くずしにはヴァリエーションがある。しかも書いたひとそれぞれに違う。

古文書のみちは遠く険しく‥‥‥_a0278809_15573217.jpg

これは「様」という字の例ですが、おなじ文字だなんて思えますか?

古典、古文書でたぶん一番たくさんでてくる文字、

古文書のみちは遠く険しく‥‥‥_a0278809_15575736.jpg

「候」でありますが、くずしていった挙句に「、」になっちゃう。

古文書のみちは遠く険しく‥‥‥_a0278809_15582220.jpg

怒涛の日本語であるなぁ、まったく。


でも、ここで負けたら爺さまがすたる!

友だちに教えてもらって、

古文書のみちは遠く険しく‥‥‥_a0278809_15584576.jpg

県の公文書館の講座にもでてみました。

古文書のみちは遠く険しく‥‥‥_a0278809_15590405.jpg

ふむ、ここは太刀打ちできたかも。


結局慣れるしかないんですね。二年間やってみてのこれが結論です。

外国語だと思えばよいのだ、きっと。

そう思ってつづけるのだ!


にしても道は遠いなぁ、

けわしいなぁ‥‥‥♪


参考書籍

「古文書手習い」「続古文書手習い」「古文書はこんなに面白い」「古文書はじめの一歩」「古文書くずし字200選」「同500選」「近世古文書解読辞典」以上柏書房

「くずし字解読辞典」東京堂出版


by march_usagi | 2020-02-01 00:00 | 秘密の本棚 | Trackback | Comments(2)

ロンドンキティのご縁

ロンドンキティのご縁_a0278809_12574330.jpg

ご当地キティのつながりで、

ロンドンから娘のつれてきたのが

ロンドンキティのご縁_a0278809_12580925.jpg

このかたです。

机に飾れとおいていきました。問答無用です。


ここには「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」のジャックが住んでおりましたが、

ロンドンキティのご縁_a0278809_12583683.jpg

並んだらこうなっちゃった。


ジャックとロンドンのキティ

ジャックとロンドン

ジャック・ロンドン!


くだらない語呂合わせですが、急に読みたくなりました。

ロンドンキティのご縁_a0278809_12590683.jpg

本棚をさがしたら、あった、あった。

奥付から中学2年のとき買ったものと判明します。

ロンドンキティのご縁_a0278809_12592542.jpg

にしても小さい活字だなぁ。

最近の文庫と比べても、こんなに小さい!

ちなみに1ページあたり『野生の呼び声』は43文字×17行で731文字、

左の赤坂さんの『東京プリズン』は38文字×18行で684文字でした。

ロンドンキティのご縁_a0278809_13000633.jpg

いわゆる動物文学などとんと読まなくなりましたが、

これもキティちゃんのご縁と思い、

秋の夜長にページをくってみようかと考えています♪


by march_usagi | 2019-11-09 00:00 | 秘密の本棚 | Trackback | Comments(2)

牧水と酒と父(父の三十三回忌に寄せて)

わたしがまだ幼かったころ、父はわたしを連れてよく飲み屋にゆきました。

たいてい休みの日の昼飯どき‥‥‥散歩と称するお出かけです。

牧水と酒と父(父の三十三回忌に寄せて)_a0278809_10544353.jpg

白木のカウンターに明るい光、むかい合わせに白い割烹着のきれいな女のひとがいて、銚子の首をつまんでいます。

「坊ちゃんは?」と訊かれてうなずくと、

小ぶりの盃に湯気のたつお酒をついでくれました。

父はにやにや笑いながら自分の盃をかたむけます。


三十三回忌もすませ、ふだん父が意識にものぼらなくなったこのあいだ、

めくっていた歌集のページに目がとまりました。


<白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけれ>


若山牧水です。

ふと記憶がよみがえって‥‥‥あ、この歌は父からきいた歌だった。


中学校以降、

わたしは父と外出することがなくなりました。

しぶとい反抗期のあとは高校紛争と学生運動の季節があり、親と口をきくことのない日々がつづいていたのだと思います。

牧水と酒と父(父の三十三回忌に寄せて)_a0278809_10551403.jpg

冷たい息子をよそに、

父は晩酌にひとり杯をかさねます。

もっともそれで機嫌がわるいわけではなく、ときに歌など口ずさみ、

「酒はしづかに飲むべかりけれ」の心など勝手に講釈するのでした。

この歌はそうしてわたしの記憶に棲みついた。


学生運動の季節も去り、

わたしが家庭をもったころに父は身体をこわします。

牧水と酒と父(父の三十三回忌に寄せて)_a0278809_10553941.jpg

胸をひどく痛めて、入退院をくりかえすようになりました。

好きだった酒もほとんど断つことになります。

なので、ようやく大人同士の酒が呑めるようになったのに、外で酒席をもつ機会はなかった。

わずかに浅草の駒形か暮六つでの数回の記憶しかありません。


牧水の歌をひもといていたら、懐かしい歌がまた出てきました。


<人の世にたのしみ多し然れども酒なしにしてなにのたのしみ>

<それほどにうまきかと人のとひたらばなんと答へむこの酒の味>


どちらも父から聞いて憶えた歌です。

父は牧水を読んでいた♪


<わがいのち空にみちゆき傾きぬあなかすかなり遠ほととぎす>


一日一升

酒をこよなく愛した牧水ですが、酒毒に犯され短い生涯を閉じることになります。


酒を禁じられた牧水が、家人に隠れて盗み酒をする歌‥‥‥


<足音を忍ばせて台所にわが酒の壜は立ちて待ちをる>

牧水と酒と父(父の三十三回忌に寄せて)_a0278809_10560525.jpg

酒呑みのいやしさは、

まず下戸のかたには理解できないところでありましょうが、


牧水同様 酒を断たれた晩年の父には、

この歌が、おかしくも哀しくも心にしみとおったに違いないと思うのです。


<かたはらの秋ぐさの花かたるらくほろびしものはなつかしきかな>


by march_usagi | 2019-04-13 00:00 | 秘密の本棚 | Trackback | Comments(2)

縦書きルールへの異議申立て

「朝日新聞」の”be”という付録版に、スウェーデンからきた漫画家オーサ・エクストロムさんの『日本探検』というコラムがのっています。

いろんな日本の文化に触れて、北欧人らしい驚きをみせてくれる‥‥‥わりと楽しみにしているのですが、

先日、こんな漫画をのせてくれました。

縦書きルールへの異議申立て_a0278809_16014778.jpg

「横書きでも右から左!?」


そう、戦前までは、横書きは右から左に書くのがルール、

縦書きルールへの異議申立て_a0278809_16022355.jpg

こんなふうに表記しておりました。

縦書きルールへの異議申立て_a0278809_16024653.jpg

        読売新聞復刻版「太平洋戦争」秋元書房(1942年3月7日)


慣れればなんてことないのでありましょうが、今のわたしたちにはたいそう読みづらい。

まして左から右へ書くのがデファクトスタンダードの欧米人にとっては、ありえない表記でしょう。


戦後、横書きは左から右へ書くように変わりました。

縦書きルールへの異議申立て_a0278809_16031568.jpg

欧米と同様なので、アルファベットの引用や数字の表記もスムーズになりました。


一方縦書きは時代にかかわらず上から下へ、と決まっております。

縦書きルールへの異議申立て_a0278809_16034311.jpg

漢字成立以来の不動のルールです。

縦書きルールへの異議申立て_a0278809_16040872.jpg

東アジアの文字文化は縦に書くのが基本ですから、上から下に書くのが極めて自然です。

なので下から上へ、なんてありえない。


ただ、ただですね、

わたしまたいつもの癖でアマノジャクに考えていましたら、

「上から下へ」はよいとして、

行送りの「右から左へ」のルールはいいんだろうか、てなこと思いはじめました。

縦書きルールへの異議申立て_a0278809_16043313.jpg

漢字はもちろん平仮名もカタカナも、あるいはお隣のハングル文字でも、

書き順の横の棒は「左から右」ですよね。

とすれば縦書きの行の送りも「左から右」に送った方が自然じゃないかしら。

縦書きルールへの異議申立て_a0278809_16050094.jpg

行の尻の文字から、次の行の頭の文字に移行するのにも無理がないし‥‥‥

くずし文字だといっそう効果的です。

縦書きルールへの異議申立て_a0278809_16053863.jpg

小学生のころでしょうか、

ノートや原稿用紙に鉛筆で文章を書いていくと右手の掌のここ‥‥‥なんて云うんでしょうか、ここが亜鉛の粉で真っ黒くなった。

汚れた掌でこするものだから、書くそばから紙面が汚れた。

ペンや毛筆だと、乾くまで掌をふれることができないし、

なので、わたくしいつも小さなメモ紙を右掌の下にあてがって書いておりました。


これって、「右から左」へ行を送るからですよね。書いた文字のうえを掌がこすってゆく。

横書きの世界では存在しないハンディです。


わたしの癖で、ものを憶えるには「書く」のが一番と思っています。

書いて、書いて、憶えます。

たくさん書きこむので、いわゆる大学ノートみたいなものを使います。

最近「古文書」を読めるようになりたくて勉強中ですが、

縦書きルールへの異議申立て_a0278809_16060085.jpg

文字や単語を「左から右」に書きこんでみました。

こうすると掌も紙面も汚れない。

合理的です。

書き順の流れと行の流れがあっていますから、なんか自然に送れます。

ちょっとしたコロンブスの卵だなぁ♪


もちろんいまさら変えられないことはわかっています。

どこの国の誰に云っても一顧だにされないでしょうねぇ‥‥‥

わたしたちの国語のさらに前に、中国三千年の文書の歴史があるのですから。

縦書きルールへの異議申立て_a0278809_16062492.jpg

にしても、誰がどんな理由で「右から左」に送ると決めたんだろう?

調べたひといるんだろうか。

トリビアですが、歴史の謎みたいな気がしています。


by march_usagi | 2019-01-26 00:00 | 秘密の本棚 | Trackback | Comments(2)

『カッサンドラ』と悲劇の意味

クリスタ・ヴォルフをご存じでしょうか。

旧東ドイツの女流作家。かつてナチス敗北後の社会主義建設に、人類のきたるべき姿を見出そうとあこがれた少女。

『カッサンドラ』と悲劇の意味_a0278809_10082501.jpg

党にはいり、その文化戦線の輝かしい活動家となりました。しかし東ドイツの社会主義は、徐々に彼女の理想とはなれていく。あるいは彼女の書くもの、行動に対して規制を強めていく。党の路線と彼女の社会主義的理想との、言葉は同じでもかけ離れていく実態‥‥‥。ある事件を契機に、彼女は党によって監視される存在になりました。


恒文社のクリスタ・ヴォルフ選集は、そうした時期の、つまり党の公式路線とあいいれなくなった時期の彼女の小説、評論集です。

『カッサンドラ』と悲劇の意味_a0278809_10085161.jpg

『チェルノブィリ原発事故』(本当は『故障』というぐらいのさりげない題だったのですが、ちょっとセンセーショナルな題名に意訳されてしまいました)、

『カッサンドラ』と悲劇の意味_a0278809_10091480.jpg

『どこにも居場所はない』、『夏の日の出来事』、『作家の立場』、『ギリシアへの旅』など、7冊におさめられたコンパクトともいえる選集。

『カッサンドラ』と悲劇の意味_a0278809_10094649.jpg

『カッサンドラ』は、そのなかで、もっとも小説らしい小説です。


カッサンドラは、トロイ戦争のさなか、ギリシア軍に包囲されたトロイの王女のひとりでした。

『カッサンドラ』と悲劇の意味_a0278809_10101093.jpg

アポロンとの契約で、カッサンドラは未来を預言する力をさずけられます。しかしそのときアポロンの誘惑を拒んだ報いとして、そのことばは人々から拒否される、そんな呪いをうけてしまいます。ひとは彼女の警告に耳を貸さない‥‥‥たとえそれが人々の将来をあやまらせることになるとしても。

『カッサンドラ』と悲劇の意味_a0278809_10103427.jpg

   15世紀 仏『トロイア史再述』挿絵 『ギリシア神話の世界』東洋書林より


何年も何年もつづいた戦争は、ギリシア側の謀略によって終結します。例のトロイの木馬です。カッサンドラの警告は、この時も人々のとるところとならなかった。彼女は捕えられ、ギリシアに送られていきます。その先には屈辱の死が待っています。

恋人が彼女を救おうとします。勇敢な少数の兵士をひきいて落ちのび、新しい権力を樹立しよう。新しい天地で、新しい王国を築き、新しい文明を起こそう。あなたはわたしの伴侶となり、国の預言者となる。しかしカッサンドラは拒否します。屑そのもののような敵将におかされながらも、彼女は静かにトロイと運命をともにしていく。彼女の前に、どこまでも澄みきったギリシアの青空がひろがります。

『カッサンドラ』と悲劇の意味_a0278809_10115374.jpg

王女カッサンドラは、言うまでもなく作者クリスタ・ヴォルフの分身です。高潔な目標をかかげた社会が、その内部から腐っていく。最初は目につかないところから、ゆっくりとゆっくりと侵食する腐敗。カッサンドラは(ヴォルフは)それを知っている。しかし彼女の警告に耳を貸すものはない。やがて腐敗は一挙にすすみ、その崩壊はとめることができなくなる。

ならば、その社会を超えればいい。そんな腐った社会は見限り、新しい権力と制度を創造するために闘えばいい。恋人はそう呼びかけます。しかしカッサンドラは(ヴォルフは)そうすることができない。あるいはしようとしない。なぜならその社会は、たとえ今やお題目にすぎないにせよ、彼女の理想を看板にした社会だからなのです。
むしろ彼女はみずからの理想と(理想の亡霊と)、そして腐りはてた社会と心中する道をえらんでいく。

これはあきらめでしょうか。

『カッサンドラ』と悲劇の意味_a0278809_10122163.jpg

あきらめかもしれません。しかしあきらめにしては至極意志的にも思えます。意志的にあきらめている、といったほうがいいかもしれない。

あるいはそれは抗議かもしれない。抵抗かもしれない。無抵抗の異議申立てかもしれない。

それにしても感じられるのは、彼女の静かで透明な洞察と意志、男性的な論理につらぬかれることのない、海や空のような存在感。‥‥‥永遠性。

『カッサンドラ』と悲劇の意味_a0278809_10124364.jpg

            ベルリン鉄の壁 1997年


社会主義という理想が、少なくともソ連や東欧で試されたような形では存在し得ないという現実がつきつけられて四半世紀、リセットされた世界はしかし搾取と苦渋に満ちている。人々は何をたよりに生きなければならないのでしょうか。

新しい希望が芽生えるために、ひとは何年、あるいは何世紀待たねばならないのか。

文明とは何か。文明の目的とは何か。

その基準が普遍的価値で裏打ちされないとしたら、良心的でありつづけるということにどんな意味があるというのか。

ほうりだされた知識人にとって、世界はあまりに重く不気味です。


ただ少なくとも考えることだけは、やめてはいけない。思考の停止は単に不可解の闇をあつくするだけだから。

わたしの耳に、ヴォルフの声はそんな風にきこえます。

『カッサンドラ』と悲劇の意味_a0278809_10140434.jpg

  アキレウスに殺されるアマゾネス女戦士 前掲『ギリシア神話の世界』より


敵軍に包囲された数年のうちに、王女カッサンドラは陋劣な男たちを見限って、新しい価値観をもった女たちの集団にちかづいていきます。男の支配を拒否したとき、彼女は王女カッサンドラではなくなる。「王女」という男性の支配体制にくみこまれた存在でなく、ひとりの生きた存在としての女性‥‥‥そうしたものに変わっていこうとします。しかしそれはまだ可能性にすぎない。その可能性はトロイの敗北によって断ち切られ、カッサンドラの死は、「王女の死」以外の何ものでもないかたちで無惨に強制されていく。

その挫折の美しさは古典的ですらあります。


『カッサンドラ』と悲劇の意味_a0278809_10150548.jpg

現代における悲劇の意味はどこにあるのか。

それはまたひどく大きな問題で、今日それを書きつくす時間はないけれど、少なくともこの世界が希望に満ちた世界でないことだけはわかっています。わたしたちがこの世界を生きていくために、おそらく可能な選択は二つしかない。

ひとつは見ない振りをすること、世の中にはなにも問題はないと笑うこと。

もうひとつは現実を直視する勇気をもつこと、たとえ有効な解決策は見つからなくとも叡智をもって立ち向かうこと。

無論選ばねばならない道はひとつしかありません。

悲劇はたぶんその選択にあたっての道義的援護のためにあるのでしょう。わたしはそう思っています。

『カッサンドラ』と悲劇の意味_a0278809_10153169.jpg



by march_usagi | 2018-11-24 00:00 | 秘密の本棚 | Trackback | Comments(2)

三度読みのすすめ

二度読んだ本はたくさんあります。

一度ではよくわからんかった、って場合もありますし、

買ったことすら忘れて、ページくっているうちに前に読んだこと思いだす場合とか‥‥‥


でも三度読む、それ以上読むとなるとやはり限られてきます。

それなりに重さがあるものに違いない。

三度読みのすすめ_a0278809_11014027.jpg

古典では、『源氏』

三度読みのすすめ_a0278809_11020445.jpg

『平家』、

三度読みのすすめ_a0278809_11022561.jpg

『古事記』に『雨月物語』といったあたりがそうでして、このひとたちは仲のいい友だちみたいな気がします。

日本の著作で近代以降のものはありません。


海外のものももちろん多くはなく、

三度読みのすすめ_a0278809_11024913.jpg

マルローや

三度読みのすすめ_a0278809_11030918.jpg

ヘミングウェイの小説のいくつか、

三度読みのすすめ_a0278809_11033017.jpg

クリスタ・ヴォルフ、

三度読みのすすめ_a0278809_11035569.jpg

クローデルの『灰色の魂』と云ったあたりでしょうか。

三度読みのすすめ_a0278809_11042086.jpg

ずいぶん久しぶりにレマルクの『凱旋門』を読みました。

最初に読んだのは学生のころだから40年はむかし、二度目は20年前かと思います。

ご存じの方もいらっしゃるでしょうが、ナチの迫害をのがれた医師が、愛するひとの命と、自らの生活とをうばったゲシュタポを殺害するという話‥‥‥

復讐劇を縦糸に、ファム・ファタルと云ってよい女性との恋愛が横糸にからんで、大戦前夜の不穏な欧州の日々が濃密にえがきだされます。


三度目の良さは、これだけ重くこみいった内容であっても気軽に読めるという点‥‥‥

筋と結末はわかっていますから、そこでやきもきする必要はありません。

ただそこに至る構造と伏線を発見し味わうこと、

また読みかえす年月がはなれていたのなら、その間たくわえた自分の人生が投影されます。

ラヴィックとジョアンの情事など、所詮子どもにはわかりません。

三度読みのすすめ_a0278809_11044397.jpg

古い背表紙をながめるのは楽しいものです。

本の肩に指をかけ、ひきだしたものが三度目以上のものならば、それは終生の友人とめぐりあったということ‥‥‥

三度読みのすすめ_a0278809_11051221.jpg

そんなこと思いながら、秋の夜長をすごします。


by march_usagi | 2018-11-17 00:00 | 秘密の本棚 | Trackback | Comments(0)

齢をかさねることには意味がある‥‥‥『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』

ふだん強気のわたしですが、たまに落ちこむことだってあります。

これ以上齢をかさねて、なにか良いことがあるのだろうか‥‥‥


そんなときこの映画を観ます。

齢をかさねることには意味がある‥‥‥『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』_a0278809_11411228.jpg

ライ・クーダーが、

キューバの老いたミュージシャンたちを掘りおこしてつくったアルバム

『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』


これを追ったヴィム・ヴェンダース監督の同名のドキュメンタリーフィルムで、

99年の作品です。

齢をかさねることには意味がある‥‥‥『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』_a0278809_11414357.jpg

<同名アルバムより>

当時77歳、ルベーン・ゴンザレスのきらめくようなピアノや、


A・バルデスの息をのませるドラム、マラカス、

オチョアの夢みたようなギター、

齢をかさねることには意味がある‥‥‥『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』_a0278809_11423131.jpg

当時90歳を超えていたコンパイ・セグンドの、洒脱で軽妙な節回し‥‥‥

この齢に到らなければだせない唄声かもしれません。

齢をかさねることには意味がある‥‥‥『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』_a0278809_11425335.jpg

そしてオマーラ・ポルトゥオンド!

時空を超えた歌姫、なんと芳醇な声!


貧しいキューバのふところに、こんなにも贅沢な音楽が眠っていました。

しかも老いたミュージシャンたちが、少しも枯れることなく育みつづけていた。

やはり心がゆさぶられます。


「男ざかり」なんてことばがありました。

40代あたりを云うのでしょうか。

齢をかさねることには意味がある‥‥‥『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』_a0278809_11431519.jpg

でも「盛り」はそこで終わるものだろうか。

心さえ老いなければ、ひょっとして生きている限りつづくのではないだろうか。

むしろ齢をかさねるほど、

ひとは、

技は、

より磨かれ、深くなっていくのではないだろうか。

ひとが齢をとることには、みえない意味があるのかもしれません。


わたしはどうなのだろう?

これから生きていくことで、

磨かれるなにか、もっと深くなれるなにかがあるだろうか?


あるかもしれない、

ないかもしれない。

齢をかさねることには意味がある‥‥‥『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』_a0278809_11434187.jpg

<同名アルバムより>

なので、心がさみしくなったとき、この映画を観ます。


by march_usagi | 2018-07-07 00:00 | 秘密の本棚 | Trackback | Comments(4)

目からウロコ‥‥‥『知ってはいけない』

買うときは、いわゆる「トンでも本」かな、と思いました。

目からウロコ‥‥‥『知ってはいけない』_a0278809_11404335.jpg

『知ってはいけない』 著者矢部宏冶 講談社


題からして、なんとなくいかがわしい。


でもすぐに、きちんと裏どりした書であることがわかりました。

いままで不思議に思っていたことが、すらすらと解ける。


たとえば米軍が犯罪や事故を起こしても、日本の警察が逮捕できない‥‥‥不思議だったんですよね。

この本によれば、これって日米合同委員会でこうした密約がかわされていたから


「裁判権放棄密約」 日本側はいちじるしく重要な事件以外は、裁判権を行使しない(19531028日)

「身柄引き渡し密約」 米軍関係者による犯罪が、公務中に行われたものかどうかわからないときは、容疑者の身柄を米軍に引き渡す(19531022日)


公務中であれば、もちろん米軍が確保します。

「わからない」という場合も、「公務中」かどうかを云えるのは米軍だけですから、結局被疑者の身柄は米軍に引き渡すことになる‥‥‥


なるほど、被疑者が日本の裁判にかけられることなく、いつのまにか帰国しちゃってるって、こういうことだったんですね!


2015年の戦争法案のとき、政府側の論拠として「砂川判決」がもちだされましたね。

なんで今ごろそんな判例もちだしたのか、よくわからなかったのですが、あれは重要だった。


砂川判決は要約すれば、

「安保条約のような重大で高度な政治性を持つ問題については、最高裁は憲法判断をしなくていい」

ということだそうでして、

つまり安保条約や、「安保条約のような」ものは、憲法を超越したものである、

戦争法も「そのような」重大で高度な政治性を持つ問題なのだから、市民は「憲法違反」だなどとつべこべ云っても意味がない、


とこういうわけだったんですね。

なるほど!


そんなこんなが、わかりやすく、コンパクトにまとめてあります。

長々とご紹介するわけにいきませんが、ずっと不思議だった日本と安保・米軍との関係がずいぶん見通しよくなりました。

目からウロコ‥‥‥『知ってはいけない』_a0278809_11404358.jpg


目からウロコの本であります。






by march_usagi | 2018-02-10 00:00 | 秘密の本棚 | Trackback | Comments(2)

地中海のいざない

やはりこの本でした。

地中海のいざない_a0278809_16201243.jpg

アナール派歴史学の看板みたいな書‥‥‥フェルナン・ブローデルの『地中海』です。

16世紀‥‥‥つまり近代資本主義が開花し、都市国家から領土国家がうまれてくる時代、大西洋が征服され未知の大陸がとりこまれていく時代‥‥‥その時代の文明と経済と政治と、いっさいの世界を牽引した地中海の歴史とを、膨大な文献と資料によって凝縮した書、『地中海』

地中海のいざない_a0278809_16203551.jpg

第一巻は自然と風土、すなわち環境からひもとかれます。

そもそも地中海とはどこか‥‥‥

地中海のいざない_a0278809_16205690.jpg

オリーブの北限と椰子の南限とにかこまれた内海の地域‥‥‥

いえいえ、もちろんそんな単純な話ではありませんで、高地、海岸、砂漠、海洋、島嶼、台地、海峡‥‥‥ありとあらゆる角度からこの地を解剖していく。

要約すら不可能な記述がつづきます。

地中海のいざない_a0278809_16211333.jpg

これはもう魔書といってよい。

読みすすみました。本の虫みたいに‥‥‥

そしたらうずき始めてしまったのですよ、

その、

なにが‥‥‥

一度は抑えこんだのです、この欲望。お金かかるし、暇ないし‥‥‥

でも二度目読んだらもういけません。

で、

地中海のいざない_a0278809_16213323.jpg

考えはじめちゃいました。

ヴェネツィア‥‥‥近代社会・近代資本主義のうまれた都市(まち)、

古代国家とはことなった、新しい権力・経済をつくった最初の都市国家、

そして現代につながる西欧文明をうみだした土地、

ここにだけはどうしても行きたいなぁ!


by march_usagi | 2017-01-21 00:00 | 秘密の本棚 | Trackback(1) | Comments(2)

終わっていない、始まってもいない


終わっていない、始まってもいない_a0278809_14202209.jpg

年が明けました。

終わっていない、始まってもいない_a0278809_14203149.jpg

年の初めにご紹介するのは小川未明の『黒い人と赤いそり』‥‥‥



北のはずれの氷の國で、ある日、割れた氷に三人の村人がさらわれます。

彼らを救おうと五人の男たちがそりで向かいますが、この五人も帰ってきません。

のこされた村人は額をあつめて相談します。

けれど結局、誰も救いにいくものはありませんでした。


やがて村には不吉なできごとが起こりはじめます。

終わっていない、始まってもいない_a0278809_14203895.jpg

「ああ、この国に、なにか悪いことがなければいいが。」と、みんなはいいました。

「あのとき、あの五人のものを救いに、だれもいかなかったじゃないか。」



わたしたちの世界は終わってもいないし、始まってもいない‥‥‥

その舵は、わたしたちが握っています。


by march_usagi | 2017-01-01 00:00 | 秘密の本棚 | Trackback | Comments(0)