子どものとき、道ばたの神さまはどこの辻にもいらっしゃった。 年を経て探してみたら、ずいぶんお仲間が減っていた。 小さな生きものと同じ‥‥‥そう、でも、負けないよ♪
by march_usagi
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千年なんて昔じゃない‥‥‥和泉式部の恋

千年ほど昔、藤原保昌(ふじわらのやすまさ)という公家がおりました。丹後、摂津、大和、山城の守を歴任し、従四位下にまでなったかたですが、武勇の誉れたかく、柔弱な藤原一族のなかでは異彩を放っている人物であります。
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「宇治拾遺」の二八に「袴垂合保昌事」という話がのっておりまして、
盗賊の首領袴垂(はかまだれ)が着物を盗もうと物色していると、ある月夜、よき身なりの公家が笛を吹きつつとおりかかるのに出会います。これぞ「われに衣えさせむとて出たるひとなめりと思て」あとをつけ、たびたび襲いかかろうと狙うのですが、このお公家、どういうわけか隙がない。1キロほども様子をうかがい「さりとてあらんやは」、意を決して斬りかかろうとした瞬間、さと笛を吹きやみ、ふりかえって「こはなにものぞ」と問いかけます。
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“ONE HUNDRED ASPECTS OF THE MOON” by Tamara Tjardes MUSEUM OF NEW MEXICO PRESS

袴垂は射すくめられたように身動きができなくなりました。
その盗賊に保昌は「あやうげに、稀有のやつかな」「ともにまうで来」とよびかけ、ふたたび笛を吹いて歩きだします。袴垂は「鬼に神とられたるやうにて」あとに従い、着いてみれば摂津前司保昌の家だったというお話。袴垂は説教されて放免されます。

話長くなりましたが、この保昌の晩年結婚した相手が和泉式部です。
和泉式部と云えば紫式部や清少納言とならぶ王朝文学の才女、なかなか手ごわい方と思っていたのですが、
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『和泉式部日記』に目をとおしているうちにすっかり思いを改めました。

『日記』はこのように始まります。
「夢よりもはかなき世のなかを嘆きわびつゝ明かし暮すほどに‥‥‥」

なんのことかと云いますと、この式部さん、当時橘道貞という方と結婚し、一女ももうけていたのですが、皇太子の弟の弾正宮為尊親王といい仲になってしまう。宮さまは女好きで有名で、『榮花物語』「とりべ野の巻」には「この程は新中納言・和泉式部などにおぼしつきて、あさましきまでおはしましつる御心ばへ」なんぞと書かれております。夜遊びが過ぎて、『日記』のはじまる1年ほど前に急死されてしまうのですね。式部はその一周忌を前に、しんみりしていたわけであります。

そんな式部さんのもとへ、亡くなった宮の弟・帥宮(そちのみや)敦道親王がやってまいります。
宮は連れてきた小僧っこに、橘の花をもたせて様子をうかがいます。花を見てなんというか、試してみようという魂胆。
式部は思わず「昔の人の‥‥‥」とくちずさみます。それはご存じ古今集の
「さつき待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする」 でありまして、
橘の花の香りをかいだら、わたしも亡きあなたの兄宮への思いにつつまれましたよ‥‥‥の意であります。弟宮の期待したとおりの反応でした。
気をひかれた式部は、
「かほる香によそふるよりはほとゝぎす聞かばやおなじ聲やしたると」
と問いかけます。これはようするに、「あなたの声を直に聞いてみたい気がするわ、兄君の声に似ているのかしらん」なんて意味。
弟宮の返しがこれまた美しくて、
「おなじ枝に鳴きつゝおりしほとゝぎす聲はかはらぬものと知らずや」
とこうでありまして、血をわけた兄弟なんだから声がそっくりなのは当たり前でしょ、って返しです。

そのあとの顛末はご自身で読んでいただくのが一番ですが、
なかなか濃厚な愛の歌のやりとり、逢引き、もちろんセックスがくりかえされるわけでして、ただこの式部さん、このあいだも親王だけを相手にされていたたわけでないのが面白い。ちゃっかり他に源少将雅道さんとか治部卿俊賢さんなんかも咥えこんでおります。
宮さませっかく訪ねてきても先客がいたりして、逢えない晩もあるんですね。そうすると気が気でなくなる。
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他の男に邪魔されないように、式部さんを夜のドライブに誘いだしてどっかで一夜を共にする、‥‥‥こんな逢瀬もしてみたりします。
そうしてある晩意を決し、
「あのさ、いっそ僕んちに来てくれない?」って誘うのです。
「僕んちったって、宮さま奥さまいるじゃないっ!」と声が裏返ったかどうか知りませんが、式部さんうろたえます。
それはそうですよね、ただでさえ身分が低い、男出入りが頻繁、宮さまが訪れるにはいかがなものかとの評判もある。亡くなったお兄さまとの噂だって絶えていません。そんな女性をれっきとした奥さまのいる屋敷に連れこむというわけですから全くおだやかではない。
「奥さま、黙ってるわけないじゃないっ」てな台詞は書きこまれていませんが、読む者冷やひやいたします。
でも宮は執拗です。

行こうか行くまいか、式部さんは
「この宮づかへ本意にもあらず、いわほのなかにこそすままほしけれ、又うきこともあらばいかゞせん」と悩みつづけるのですが、
ほだされちゃっているんですね、常識がだんだん働かなくなってまいります。
「あいなし」‥‥‥つまり決して悦んでというわけではないがしかたない、と降参します。
「たゞわれゆきてゐていなんとおぼして、十二月十八日、月いとよきほどなる」晩に式部さん、ついに本宅にまいりました。侍女ひとり伴っただけであります。
もちろん、宮の本宅では大騒動がもちあがります。
怒り心頭に達した奥さまは、
「実家に帰らせてもらいます」といった感じで、皇太子妃のお姉さまのところに出ていかれてしまう‥‥‥
『和泉式部日記』は、ここでぷっつりと途切れ、宮や北の方との関係がそのあと具体的にどうなったかは書かれておりません。
そもそもこの「日記」、ご本人が書いたにしては奇妙に客観的、物語的なところがありまして、たとえば式部の動きと並行して、宮さまの動きも見ていたように描かれる。式部の知るわけもない北の方の心情や姉妹とのやりとりも書かれたりして、これが彼女の直筆の「日記」なのかについては異を唱える方もいらっしゃるようです。(わたしもそちらに傾いております)
ですが、いいんですねぇ。
王朝文学というと、つい隠微で優柔不断、形式ばかりで実質がうすい、庶民の心情からかけ離れているなんて先入観で観てしまうのですが、
式部さん、身分の差などものともせず、心の命ずるままにひとりの男として宮をみる。ときにすげなく、ときに情熱的にふるまいつづける。
紫式部に「和泉はけしからぬかたこそあれ」なんて云われるくらいですから、同僚の間でも芳しくない噂がしきりだったのでありましょう。ビッチとそしられ、めげてしまうときもあったのでしょうが、それでも自分の気持ちを大切にして生きてまいります。
わたしたちの時代と一千年の空白があるなんて思えません。

ただ悲しいことに3年後にはこの帥宮敦道親王も亡くなります。橘道貞さんとの婚姻も解消されてしまったようで、王朝の恋の花にもようやく陰りが見えてまいりました。

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別冊太陽『月岡芳年』平凡社

その式部さんの再婚相手が、冒頭で紹介した藤原保昌です。
月下氷人はふたりの雇主であった関白道長。
このとき保昌もう相当な齢であったと思われますが、傷ついた和泉式部をみて、女性の心を読むにたけた道長が、むしろよしと推したのかもしれません。
男には冷酷な道長ですが、女性にはたいそうものわかりがよい。女に手慣れた男でない方が、こうしたときには救いなのです。
丹後守の時代にはすでに同居されていたようなので、袴垂の事件のときには式部さんもご在宅だった可能性が高いと思います。
保昌は袴垂を放つとき「綿あつき衣一を給は」ったそうでありまして、この着物は式部さんがとりだしてきたものかもしれません。
盗賊が去ったのち、ふたりでどのような話をされたか、聞いてみたいような気がいたします。
かつての情熱の女と老いた武辺者、案外似合いの夫婦であったのかもしれません。
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by march_usagi | 2016-02-14 00:00 | 秘密の本棚 | Trackback | Comments(2)
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Commented by otyukun at 2016-02-17 08:20 x
流石に造詣が深いですね。
古文なんて読もうという気も起きません。
もののあわれと言われる源氏物語もややこしい人間関係にうんざりしてしまいます。
人間描写の妙があるのでしょうが。
和泉式部忌が誠心院という所で3月21日に開催されます。
中京区にあるお寺です。
Commented by march_usagi at 2016-02-17 09:54
古典読んでいると、忘れられたいろんな文化が甦ってきます。今の時代で意味がつかめなくなったものが、「なんだ、そんなことだったのか」と理解できたりもします。
でも一番大きなことは、時代が変わってもひとの心は変わらない、ということですね。
海外で感じることと似ています。

和泉式部は人気のあるかたで、方々で縁のお寺だの、イベントだのがあるようですね♪