子どものとき、道ばたの神さまはどこの辻にもいらっしゃった。 年を経て探してみたら、ずいぶんお仲間が減っていた。 小さな生きものと同じ‥‥‥そう、でも、負けないよ♪
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ヘミングウェイとベルリオーズ

音楽をことばで描くのはむつかしい‥‥‥というより不可能なことと思います。
でもある種の音楽はとても文学的、
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ベルリオーズの『幻想交響曲』はそんなよい例です。

ご存じのように、『幻想交響曲』では
第1、第2楽章で 青年の美しい女性へのあこがれ、不安、恋、歓びを唄い、
第3楽章で心の平穏を得る‥‥‥
しかしその平穏は長くつづかず、第4楽章で青年は女を殺し、自ら断頭台にのぼる夢をみる。

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      <ゴヤ『すてきな先生』1799 「ゴヤ:版画にみる時代と独創」読売新聞社>

有名な第5楽章では、女は一転して醜い妖婆となって現れ、主人公を嘲笑する‥‥‥
なんて筋になっております。

誰にも若き日のあこがれが、凄惨な悲喜劇と化すことがないとは云えませんが、
自己の失恋を壮大な交響曲にしてそのカタルシスを得たというベルリオーズの執着は、いささか常軌を逸しているようにも思われます。

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          <"Leopard” by Desmond Morris REACTION BOOKS LTD>

さてヘミングウェイです。
ヘミングウェイといえば、マッチョの代名詞みたいに思われておりまして、
狩を愛し、酒を愛し、革命を愛し、闘牛を愛し‥‥‥と、男の中の男のイメージが定着しているんじゃないかと思います。

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先日、全集を読みかえしてみました。
ついでに死後刊行されたものもすべて。

そこでふと気づいたのが、そんなヘミングウェイらしからぬ、ある執着です。
ヘミングウェイは4人の女性と結婚いたしましたが、わたしの云うのは、その最初の奥さん、ハドリーに関すること。

文豪ヘミングウェイにも、当然駆け出しの時期がありまして、
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欧州に滞在し、1行いくらの記事を新聞社に送電しながら、売れない小説を書き綴る日々を送っておりました。ハドリーとのあいだには、長男が生まれております。
さてそのヘミングウェイが仕事で家を留守にしたとき、このハドリー、なにを考えたのか彼の書きかけの原稿を出先に届けようと思いたちます。
スーツケースに原稿と、コピー、カーボンの写しまでつめこんでハドリーは出立するのですが、駅でスーツケースごと盗まれてしまいました。
直後にヘミングウェイの浮気が発覚し、ハドリーとの間は終末にいたるのですが、原稿は永遠に失われたままでした。

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死後、トム・ジェンクスの編集で世にでた『エデンの園』は、珍しく主人公と悪妻との愛憎こんぐらかった不倫話です。
小説のなかで、この妻は夫の書いた未発表の小説を焼却炉で焼きつくします。盗まれたんじゃなくて、焼いちゃった。
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『何を見ても何かを思いだす』も死後発掘された未発表の短編集ですが、このなかの一編『異郷』では、原稿盗難事件が、これはいわゆるオフィシャルに語られた展開のままで登場します。
興味深いのはこの主人公の原稿を失った作家‥‥‥ロジャーという名前です‥‥‥が、実はさらにもうひとつの未発表の大作、
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『海流のなかの島々』の本来の主人公ではなかったかと疑われることです。(本編ではトマスという画家が主人公ですが)
『海流のなかの島々』のなかには奇妙な一節がありまして、戦争で息子をなくした主人公が、その息子を生んだ別れた妻と出会い、一夜を共にする‥‥‥そして翌朝別れてしまうという‥‥‥幻想としか思えないシーンがでてまいります。
小説としても説明不十分だし、なんでここにおかれたかさっぱりわからない。

ただここいら辺の「妻」がすべて最初の妻ハドリーを同一のモデルにしていたとすれば、
そして彼女に対する怒りと執着のミクスチャがこんな展開を生んだと考えれば解ける気もする。

つまり、ヘミングウェイは、原稿が「第三者に盗まれた」とは思っていなかった。それはなんらかのメッセージを含んだ「ハドリーの犯行」だった。ヘミングウェイは表向きはともかく、決してそれを許していなかった。
にもかかわらず、彼は(その後の3人の妻をふくめて)誰よりも深くハドリーを愛していた。

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だから、これらの本は生前出版されることがなかったのです。
小説として推敲されていない、完成されていないということもあるのでしょうが、その前に、彼自身がそこに残された愛憎を整理しきれなかった‥‥‥わたしはそう推測しています。

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音楽家の前に現れた妖婆は、かつての恋人のカリカチュアでした。
それは純粋な愛の、損なわれた醜く痛々しい幻影でしかありません。
にもかかわらず音楽家はそれから自由でいることができない。
どんなに嫌悪していようと、殺してしまいたいほど憎んでいたとしても、彼は女から自由ではない、
縛られているのです。

共通していないでしょうか?

ヘミングウェイは単純なマッチョではありませんでした、
ずっとずっと複雑でナイーブな男だった。もっと云ってしまえば未練たらしい、痛々しくも愛から逃げられない男だった、と。

実はこの歳になって、かえってヘミングウェイが好きになったような気がしています。
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                <『ヘミングウェイ全集』三笠書房より>
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by march_usagi | 2015-07-11 00:00 | 秘密の本棚 | Trackback | Comments(2)
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Commented by otyukun at 2015-07-13 22:44 x
流石ですね!
文学だけでなく音楽、クラッシックまで造詣が深い!!

仕事の合間に読む少ない本は直木賞作家クラスの流行本のみ。
たまに見る映画も頭を悩ますものは×。
息抜きしか対象になりません。
Commented by march_usagi at 2015-07-14 12:32
otyukunさま
以前、若いころヘミングウェイを読んでいたと書いていられたのを記憶しております。
昔読んだ本を読み返すのも悪くありません。
これだけのスケールをもった作家は、もう生まれてこないでしょうし‥‥‥