草道を歩く
その翁の石膏彫刻‥‥‥力強い眼差しに、製作した柳沼英夫さんの翁によせる深い敬意を感じます。
となりに展示されたこちらは「草道を歩く」と題された作品
彫刻家のお父さんを彫ったものでした。
「草道」‥‥‥聞きなれない言葉です。
「道は‥‥‥」とやさしく説明してくれました。
「道ははじめ、草のなかを歩くひとびとの足あとでつくられる。やがて道はひろがり、草は消え、荷駄や轍でかためられ、石やコンクリートで被われた直線の、機能的な、現代的な道路に変身する。そのころには、最初の草の道はわすれられ、新しい道の横に側道のように、けもの道のように残るだけ‥‥‥でもそれこそひとが歩く道だったはず。わたしは草のはえたわすれられたような道を、ひたすら歩く父の姿を創造したかったのだ」と。
ひきしまった口元に柔らかな決心が息づいています。
梅雨入り前、上野の杜は水と緑と光とがあふれていました。
展覧会は、東京都美術館で開かれています。