朱色の誘惑
日本は「ワビサビ」の国と呼ばれています。
色でいえばくすんだ枯葉色、渋いお茶の色、枯山水の石の色‥‥‥
でも、ほんとにそうなのかな? 昔から疑問でした。
発端は学生のときの津軽の旅‥‥‥残念ながら写真はとってありませんが、賽の河原のお地蔵さまはみな白面にりりしい眉と赤い頬をしていらっしゃいました。
山田の案山子も派手な着物と白塗りのお顔ばかり‥‥‥とても地味といえる方たちではありません。
こちらは30数年前、やはり青森で撮った写真ですが、千利休が落胆されるような色遣いだと思います。
芦ノ湖の湖畔にある箱根神社は、関東総鎮守 箱根大権現として有名な古社です。
「権現」の呼び名のとおり当然のことながら神仏習合‥‥‥山岳信仰の拠点でもありました。 神殿が「権現造り」となっていることからもそれはうかがわれます。
ただ本日見ていただきたいのはそうした蘊蓄ではなく単純に色遣い! 「朱」色です。
神社の鳥居が朱塗りなのはいずこも同じ。石や白木のものを除けばたいてい派手やかな朱色に塗ってありますね。
鳥居だけではありません。神殿だってご覧のとおり!
巫女さんの袴ももちろん緋色です!
やっぱり! この国のひとは地味な色が好きなのではない。
禅宗や茶の宗家、施政者の一部ではある時期から地味な色合いが好まれたかもしれません。
けれど一般ピープルが同調したわけでは決してない。
一般ピープルは赤や青や緑や黄色が大好きでした!
なかでも朱は、緋は、赤は特別な色です。
こんな心ときめく色を使わないでいられるわけがない。
ねえ、そうでしょう? と龍も云っております。
わびさびの趣を特に好むのは東京の人、年齢が上がって地味なものを着ると余計に老けて見えるのに地味なものを着ます。
しかし、その中に有って京友禅らしい派手なものを好まれる方も。
目出度い席で地味なものを着ると不祝儀に見えてしまう事を意識の中に押し込んでいる様に見えます。
晴れやかな目出度いものが日本人は好きなんです。
時々、心を落ち着ける為に銀閣寺の様なわびさびが恋しくなるのでは。
必ずこうしたコメントをいただけるものと確信していました。着物の世界はまさにそうだと思うのです。この国のひとびとの色彩感覚は、実に多様かつ洗練されていて、何層もの構造になっており、それをうまく使い分けていると思うのです。
決して一律ではないのですね。
ここいら辺のところをじっくり語り合いたいものです♪