インドが好きかときかれたら
夢中になるほど好きになるか、
大嫌いになるか、
どちらかしかないと云われます。
わたしはどちらだろう?
インドのひとは美しい‥‥‥男も女もはっとするような顔だちのひとをそこここで見かけます。
だからと云ってこの国が好きになるわけではない。
街はどこも汚い‥‥‥よごれているし、乱雑だし、
牛の糞だらけ‥‥‥
列車の時間はでたらめだし、
街では怪しい「案内人」がつきまとう。
だからと云ってこの国が嫌いになるわけでもない。
考えてみれば、わたしが子どもだったころ、日本の国土は荒れていました。
ハエが飛び、野良犬がうろつき、子どもたちはみな洟をたらし、寺や神社の入り口には傷痍軍人が物乞いをしていました。
半世紀のタイムラグだと思えばなんでもない。
でも、確かにインドには嫌なところがある。
見えるところではなく、見えないところに‥‥‥わたしたち異邦人には隠されているけれど、でもやはり肌で感じてしまうなにか
インドではいたるところで所持品検査と金属探知を受けさせられます。
空港でやられるような検査を、観光地でも、ホテルの入り口でも、ショッピングモールでも、
どこでもやられる。
テロがあるから、‥‥‥と云うのだけれど、
待ってください。
テロを怖れるのはその身にやましさが潜んでいるからではないか、
暴力や死をもってしても抗議されるなにかがあるからではないでしょうか。
小道を歩いていたら、園丁の方に会いました。
片言の英語で、庭の植木や花々の説明をしてくれます。パパイヤやハイビスカス、薔薇の花園を案内してくれました。
とても奇麗に育てられている、立派な仕事ですねと云うと、とても嬉しそうな顔をして、わたしたちに薔薇の花を一輪ずつ、手折ってくれました。
ホテルをでるとき気がついたのですけれど、彼はこのお米で描く絵を毎日新しい花で飾っている。それも彼の仕事でした。
客やカウンター係やショップの支配人、わたしたちのガイドなどは、彼がかがんで働いていても、まるでそこにいないかのように行き来します。
ふとこれがカーストなのだな、と気づきました。
でもわたしには彼の姿が見える。
わたしは薔薇の花を手折ってくれた彼の優しさを忘れない!
インドが好きか嫌いかときかれたら、
わたしはこの園丁の話をしたいと思います。
彼のインドが好き、
彼を無視するインドが嫌い。
動物のたくさんいる国なので、キャラクターのアイデアはちゃかちゃか浮かびました。